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セミナー講演録
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トラブルが多い労務管理の要点 |
■年俸制でも残業手当は発生する
私は会計事務所で約20年間、総務・人事に携わり、約300社の顧問先の労務相談を受けてきました。中小企業からの相談のほとんどが解雇の問題と残業手当の問題の
2つ。本日はこれらを中心に、私の経験からお話ししていきたいと思います。
さて、労働基準監督署とは、労基法を遵守させるための行政機関です。使用者が労基法に違反しているときは改めるよう指導します。労基署には逮捕権もあり、罰則と
して懲役や罰金を課せられたりするので注意が必要となります。
最近、私の顧問先の会社が、労基署に入られました。労基署は定期調査のほかに、 特に退職時のトラブルや長時間労働の不満、残業手当不払いなどによる内部告発によ り、調査を行うことが多いのです。調査の際も、通常は事前連絡があるが、突然に入 ることもあります。
そして、調査の次にあるのが「是正勧告」。法律違反の指摘と是正を求められ、未払い給与や残業手当の支払命令を出されます。その会社が労基署から届いた「是正勧告書」には、「下記労働基準法の法律違反」とありました。
1つ目は労基法第32条。時間外労働に関する協定届けの限度を超える時間外労働を行わせているとのこと。もちろん、就業規則は当然として、36協定も提出していました。しかし、その時間を超えて働かせていたとされたのです。
2つ目は同法第37条。時間外労働に対して法定の割り増し賃金を支払っていないので、不足額については確認できる範囲で早急に支払うこと、とありました。
3つ目は同法第108条。備え付けなければならない賃金台帳に、時間外労働時間等の必要事項を記入していないので是正しなさい、とのことでした。
顧問先では当時、きちんと計算した残業手当ではなく、7万円ぐらいの定額をみなし手当として一律に払っていました。是正勧告書と一緒に届いた「指導表」には、
「一定の要件を満たす場合には、時間外労働時間相当に比例しない割増賃金の定額払いも適法とされている」とあります。その要件とは、1つは「当該手当が実際に生じ
た時間外労働等の実績において法定計算した割増賃金以上であること。ということは、 割増賃金の計算総額は各人ごとに異なり、したがって定額払いの手当も各人ごとに異なるのが一般的である」。同社では、各人ごとではなかったのです。
次にあったのは、「当該手当が就業規則等により時間外労働等の割増賃金に相当することが明確に定められ、かつ労働者に周知徹底されていること」。同社の場合はう
やむやだったようです。
さらに3つ目は、「仮に当該手当が時間外労働20時間分とすれば、20時間を超える 時間外労働が行われた場合については、定額手当では不足する割増賃金を追加して支 払うこと」。
それから、「補足的に言うと、割増賃金の定額払いは一定の要件を満たす限り適用されるのであって、例えば年俸制だから割増賃金を年俸込みであるとか、基本給を高
めに設定しているので割増賃金は基本給に込みである等の主張がなされることがあるが、このような考え方や制度は現行法上認められないことは、特に留意が必要である。
いわゆるどんぶり勘定的な支払い方法は上記の適法性要件を満たすものとは言いがたい……」。
残業手当の問題で、経営者や人事担当者がよく勘違いしてしまうのが、「年俸制だから残業手当を出す必要がない」ということです。年俸制でも労働時間をオーバーすれば、残業手当を支給しなければなりません。「営業手当や夜食代を出しているから」 「管理職として処遇しているから」も間違いです。裁判になれば、必ず払うことにな ります。「採用時に、残業手当はないと承知してもらっている」というのもダメです。 労働契約だから採用時にはそれでもいいかもしれませんが結局、払わなければならな くなります。
指導票には、「能率の低い労働者に割増賃金を支払うことはできないというがごと き主張は、法の誤解に基づくというほかはない。労基法の遵守と賃金制度および人事評価制度は別の次元の問題というべき」と書いてありました。つまり、労基法で決められている時間を超えて働いた場合には、その人が仕事ができなかろうが、割増賃金 は払わなければ違反だということです。
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