2025年の年末調整では、主に「年収の壁」対策として行われた税制改正が適用されます。
これは、特に低所得者層の税負担を軽減し、働き控えを解消することを目的としています。
実務担当者は、申告書の変更と所得要件の引き上げに細心の注意を払う必要があります。
1. 2025年年末調整の主な変更点
主要な変更点は、「基礎控除・給与所得控除の引き上げ」「扶養親族等の所得要件の変更」「特定親族特別控除の新設」の3点です。
(1) 控除額の引き上げ:「123万円の壁」の誕生
低所得者層の税負担を軽減するため、基礎控除と給与所得控除の最低保障額が引き上げられます。
| 控除項目 | 2025年分(改正後) | 2024年分(改正前) |
| 基礎控除 (※1) | 58万円(所得2,350万円以下) | 48万円 |
| 給与所得控除 (※2) | 65万円(収入190万円以下) | 55万円 |
※1 基礎控除は所得水準により段階的に減少する仕組み自体は維持されます。
※2 給与所得控除の最低保障額が65万円となったため、基礎控除58万円と合わせて123万円となり、年収123万円まで所得税がかからなくなります。
(2) 扶養親族等の所得要件の変更
基礎控除などの引き上げに伴い、各種控除の対象となる扶養親族などの合計所得金額の要件が引き上げられます。
| 控除区分 | 2025年分の合計所得金額要件 | 2024年分(改正前) |
| 扶養親族 | 58万円以下 | 48万円以下 |
| 同一生計配偶者 | 58万円以下 | 48万円以下 |
| 勤労学生 | 85万円以下 | 75万円以下 |
この変更により、扶養親族や配偶者がパートなどで働く際、年収123万円まで(給与所得控除65万円+所得要件58万円)は、引き続き扶養の範囲内となり得ます。
(3) 特定親族特別控除(新設)
扶養する19歳以上23歳未満の子(特定扶養親族)のアルバイト収入が増加し、所得要件(58万円以下)を超えた場合、親の税負担が急増するのを避けるために新設されます。
2. 実務担当者が注意すべき3つのポイント
制度の変更に伴い、年末調整の実務作業にも影響が出ます。
経理・給与担当者は以下の点に注意してください。
① 申告書様式の統合と準備
最も大きな変更は、申告書の様式が変更・統合されることです。
② 従業員への周知と記入指導の徹底
所得要件の変更や新しい控除の導入により、従業員が申告書の記入を誤る可能性が高くなります。
③ 計算ロジックとシステム設定の検証
年末調整の計算ロジック自体も、新しい控除額や所得要件を反映したものに変更されます。
3. まとめ:早めの情報収集とシステム対応が鍵
2025年の年末調整は、制度改正が多く、事務手続きが煩雑になる可能性があります。
これらの対応を徹底し、早めのシステム対応と情報周知を行うことで、年末調整をスムーズに完了させましょう。
出典:国税庁PDF「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について(源泉所得税関係)」