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2025.10.30 2025年(令和7年)年末調整:変更点と実務対応の注意点

2025年の年末調整では、主に「年収の壁」対策として行われた税制改正が適用されます。

これは、特に低所得者層の税負担を軽減し、働き控えを解消することを目的としています。

実務担当者は、申告書の変更と所得要件の引き上げに細心の注意を払う必要があります。

 

1.  2025年年末調整の主な変更点

主要な変更点は、「基礎控除・給与所得控除の引き上げ」「扶養親族等の所得要件の変更」「特定親族特別控除の新設」の3点です。

 

(1) 控除額の引き上げ:「123万円の壁」の誕生
 低所得者層の税負担を軽減するため、基礎控除と給与所得控除の最低保障額が引き上げられます。

控除項目 2025年分(改正後) 2024年分(改正前)
基礎控除 (※1) 58万円(所得2,350万円以下) 48万円
給与所得控除 (※2) 65万円(収入190万円以下) 55万円

※1 基礎控除は所得水準により段階的に減少する仕組み自体は維持されます。

※2 給与所得控除の最低保障額が65万円となったため、基礎控除58万円と合わせて123万円となり、年収123万円まで所得税がかからなくなります。

 

(2) 扶養親族等の所得要件の変更
 基礎控除などの引き上げに伴い、各種控除の対象となる扶養親族などの合計所得金額の要件が引き上げられます。

控除区分 2025年分の合計所得金額要件 2024年分(改正前)
扶養親族 58万円以下 48万円以下
同一生計配偶者 58万円以下 48万円以下
勤労学生 85万円以下 75万円以下

この変更により、扶養親族や配偶者がパートなどで働く際、年収123万円まで(給与所得控除65万円+所得要件58万円)は、引き続き扶養の範囲内となり得ます。

 

(3) 特定親族特別控除(新設)
 扶養する19歳以上23歳未満の子(特定扶養親族)のアルバイト収入が増加し、所得要件(58万円以下)を超えた場合、親の税負担が急増するのを避けるために新設されます。

  • 対象:19歳以上23歳未満の親族。
  • 要件:その親族の合計所得金額が58万円超123万円以下であること。
  • 控除額:その親族の所得額に応じて、最大63万円を所得から控除できます。

 

2.  実務担当者が注意すべき3つのポイント

制度の変更に伴い、年末調整の実務作業にも影響が出ます。

経理・給与担当者は以下の点に注意してください。

 

① 申告書様式の統合と準備

最も大きな変更は、申告書の様式が変更・統合されることです。

  • 新様式への切り替え:従来の「基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」に、新設された「特定親族特別控除申告書」が統合され、1枚で4つの控除を申告する様式になります。
  • 【実務対応】:国税庁のサイトで最新の様式が公開されたらすぐに確認し、従業員への配布準備を進めましょう。給与計算システムを利用している場合は、システムアップデートが完了しているか、ベンダーに確認が必要です。

 

② 従業員への周知と記入指導の徹底

所得要件の変更や新しい控除の導入により、従業員が申告書の記入を誤る可能性が高くなります。

  • 所得要件の周知:扶養控除の基準が実質的に年収103万円から123万円へと変わったことを、従業員に分かりやすく周知しましょう。特にパートで働く配偶者がいる従業員への説明を強化する必要があります。
  • 特定親族の確認:19歳以上23歳未満の子を持つ従業員に対し、子の合計所得金額を正確に把握させ、「特定親族特別控除」の適用漏れがないか確認するよう促してください。
  • 【実務対応】:新しい制度のポイントをまとめた説明資料を申告書に添付するなど、記入ミスの防止策を講じましょう。

 

③ 計算ロジックとシステム設定の検証

年末調整の計算ロジック自体も、新しい控除額や所得要件を反映したものに変更されます。

  • システム対応の確認:給与計算ソフトが、基礎控除の段階制新しい所得要件(58万円)特定親族特別控除の計算ロジックに正しく対応しているか、事前にサンプルデータを用いて入念に検証してください。
  • 基礎控除額の決定:基礎控除は納税者自身の合計所得金額によって控除額(58万円、48万円など)が決まるため、年収が高い従業員に対しても正確な所得計算が必要です。
  • 【実務対応】:システムベンダーからのアップデート情報を確認し、適用開始日前にテスト計算を行い、確実に変更を反映させましょう。

 

3.  まとめ:早めの情報収集とシステム対応が鍵

2025年の年末調整は、制度改正が多く、事務手続きが煩雑になる可能性があります。

  1. 新しい申告書様式(4控除統合)の準備と確認。
  2. 所得要件の変更(58万円)と特定親族特別控除の新設を理解する。
  3. 従業員に対し、新しい制度と申告書の書き方を分かりやすく周知する。

これらの対応を徹底し、早めのシステム対応情報周知を行うことで、年末調整をスムーズに完了させましょう。

 

出典:国税庁PDF「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について(源泉所得税関係)

執筆者
人事・労務コンサルティング事業部 人材紹介派遣課 吉澤 健治
経歴
大学を卒業後、専門商社の営業職を経験した後、2007年に人材業界に身を投じて、2013年に経理職の人材サービスを専門とする当社に入社。現在は、人事・労務コンサルティング事業部人材紹介派遣課に属して求人企業からの求人依頼の対応や派遣中のスタッフフォローを担当。
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